2018年2月15日木曜日

治験治療

2018年2月14日。待ちに待ったガン治療が始まる日である。かすかに興奮の気分。
朝9時過ぎに病院へ着いてすぐ指示されたとおりに3階に上がり心電図を取りに行く。3回計った。治験コーディネーターの部屋へ行き、こんどは採血室に連れられ、普段の3倍、血液を採取した。それから採尿も。徹底的な検査至上主義である。

血液や尿には多くの身体の情報が潜んでいる。医師らはそこから情報を得て、患者の状態を診断する。
検査技師たちは次から次へとやって来る患者群を黙々とこなすだけで、無駄話は一切しない。ここにも高齢者であるぼくは違和感を感じる。なんとなく居心地が良くない。大きな検査機器を潜らされて一言も発しない。ぼくは単なる「検体」か。

多くの検査が無事済んで、それから教授の診察までなんと1間45分待たされた。椅子に座ってやることなくジッと待っている。辛抱強く。待つ。待つ。待つ。最新技術で注目されている人気の先生だけに患者が殺到しているのだろう。廊下の長椅子にはびっしり診察を受ける患者が呼び出されるのを待っている。心配そうに付き添っている人もいる。さすが笑い声はない。みんなむっつりしている。ここは病院なのだ。多くの病者が笑いもなく世間話もなく、ただむっつり黙って自分の順番が来るまで待っている。
異様だよな、ここの廊下は。

教授の診察と言ってもネットワークで送られてきた検査データを見るだけで、別に聴診器を当てたりしない。「あっ、これ、下がっているね」「うん、これはまあまあかな」など教授は検査結果の数字をモニターで見ながら独りごとのように短く話す。その間、5分か~7分くらい。

別室で注射を打ってもらった。それから2時間ほど待たされ、点滴を受ける。点滴室という専門の特別室部屋があるのです。ベッドとリクライニングの椅子がズラリ並んでいる。そこに座らされ点滴を受けた。1時間たっぷり。その後再び心電図をとって採血。血圧も測る。その間、断続的に待たされ、時間だけ空しく過ぎてゆく。ああ、76歳の晩秋。

ぼくを含めた大半の患者は、システム化された巨大な医療工場の歯車の一つ、ちっぽけな存在に過ぎない。すべての検査が終わり会計を済ませたら午後4時半を回っていた。最後にコーディネーターの女性から抗がん剤を渡され、血圧を下げる薬とともに飲み方の指導を受けた。血圧計も渡された。毎朝、測るように、との指示。

病院から釈放されたのが午後5時すぎ。午後6-7時台になると上りの「ひかり」や「こだま」の本数が極端に少ない。大部分が東京へノンストップで直行する「のぞみ」ばかりのダイヤだ。ジパングという高齢者向けの優待切符を買ったので「のぞみ」には乗れない。止む無く静岡でいったん降りて、後からやってきた「こだま」に乗り換え、小田原まで戻った。深夜、ホームでの列車待ちでは寒さがキンと身に染みた。

茅ヶ崎に着いたのは午後10時を回っていた。さすがくたびれたよ。次回は2月21日である。今度は心電図と採血だけらしい。
果たしてこれでガンが小さくなる(あるいは消えるの)のかな。しばらく大阪通いが続く。
帰途の新幹線、新大阪で買った駅弁は意外と美味かった。また、あそこで買おっ。

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