2018年2月13日火曜日

予期せぬ出来事

朝7時53分発のバスで茅ヶ崎駅へ出る。新聞とサンドイッチを買って東海道線下りに乗った。熱海で乗り換え沼津へ。バスで裁判所へ行く。

今日は月1回の検察審査会が開かれる。何の因果か、裁判所は去年の秋、ぼくを審査員に指名してきたのである。むろんガンとは無関係。

周知のとおり犯罪の容疑を捜査、逮捕するのは通常、警察官で、容疑者や目撃者から事情聴取し犯罪の構成、容疑の証拠固め、容疑者の逮捕などを行う。他に司法警察職員と呼ばれる海上保安官や麻薬取締官(通常、マトリと呼んでいる)も拳銃で武装、逮捕権を持つ。テレビの刑事ものの世界。

犯罪容疑が固まったら警察官らは事件を検察庁へ調書や証拠物件とともに送致する。拘束している容疑者がいたらその身柄も検察庁へ送る。身柄送致という。

犯罪の容疑者を裁判にかける(「起訴」)権力を有するのは検察官である。検事は捜査権も逮捕権も持っているが捜査する人材が圧倒的に少ないから主に公判を担当する。ただ事件によって検察庁が直接、犯罪捜査に乗り出すケースもある。政治家や行政官の贈収賄などの汚職、地位利用の権力による犯罪や大企業の経済事犯、大がかりな選挙違反、原発事故など特異な事件に限られている。

有名なのは東京地検特捜部だ。総理の犯罪と言われたロッキード事件は特捜部の検事らが田中角栄・元首相や灰色高官に迫った。ロス疑惑、三浦事件では検察官は一審で疑惑の三浦和義を有罪としたが、高裁で逆転、無罪となり最高裁で確定した。検察の敗北である。

殺人の容疑者は大手を振って市民社会に復帰した。帰国した直後、ある人権関連の集会で三浦本人と会ったことがある。言うまでもなく彼も十分、老いていた。ぼく自身、事件発生から三浦を追ったが、実に特異な人格で虚言癖の化け物のような人物だった。1984年夏、LAオリンピックが開かれた時、ぼくは『13人目の目撃者』というドキュメントを上梓した。ハリウッドからTBSやフジテレビでマイクを持ち何度もレポートした。その後、三浦はサイパンで再度、逮捕されたが、この事件については後日詳しく書きたい。

検事が不起訴とした案件を「起訴すべき」という訴えがあって審査会に持ち込まれる。一種の権力チェックの制度である。審査員は投票権を有する成人から無作為に抽出される。
なんとぼくがその「籤」に当たったのだ。予期せぬ出来事である。

審査会は9時00分に始まって午後2時すぎに終わった。
沼津からいったん三島へ戻り、新幹線・新大阪行き「こだま」に飛び乗った。
このブログは車中で書いて(打って)いる。

まさか、76歳になって車中で原稿を書く生活が日常となるとは、これまた予期せぬ出来事であった。病院で診察を待つ時間、パソコンを開けて原稿を書く。モノを書くのが商売だからこれは楽しい部類の仕事か。

明日から治験治療が始まる。

ホテルは大阪なんば日本橋。関西では「ニッポンバシ」と発音する。鶴橋や日本橋はもっとも大阪らしい猥雑な雰囲気の街だ。もっとも冷やかし歩いているのは中国人観光客ばかり。奴らも梅田周辺よりここの雰囲気が合うのだろう。ガン治療なのに大阪をぶらつく。妙な時代を生きているんだ、と好奇心多きぼくは少しワクワクの気分が盛り上がってくる。不謹慎と叱られそうだが、最新の技術の病院より、”オオサカ”を楽しみたい。今夜はなんばの黒門市場へ行こう。
米原周辺は未だ雪が目立った。先ほど京都を発った。間もなく大阪だ。

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