2018年3月20日火曜日

医師の友だち

今回の事態とは無関係にぼくには長年、ガンを手術してきた優秀な医者が友だちにいる。高校時代の同級生で京大医学部へ進んだ。学生時代、彼の下宿へもぐりこんだこともある。高校時代、彼は剣道を、ぼくは柔道部にいた。真面目な勉強家で同学年でトップクラスの成績だった。武道場で「いやあ、あっ。とうっ!」という彼の鋭い気合が今も聞こえてくるようだ。
柔道も剣道も体育の選択科目にあった。身体の小さいぼくは大きな奴を投げ飛ばしたくて柔道部に席を置いたが、果たせずいつも受け身役。ついに白帯で終わった。

彼は外科医となった。当時、外科医のすることと言えばガンを切ること。日本人には胃ガンが多く、外科的にガンを切り取るのが手っ取り早い。医学界の常識と言えた。
ところが最近、肝臓ガンなどの臓器は外科的発想より、内科的アプローチの方が効果があることが分かってきた。分子標的剤というような高度の対ガン新薬も開発されている。ぼくが受けている治験治療がそれだ。ガンから生還でき、ガンが消えた事実を「寛解」と医学用語でいう。「完治」ではなく、とりあえずガンが消えたことを指す。再発するかどうかは分からない。しかしそこまでいけば一安心だ。彼からメールが届いたので全文紹介する。ぼくの場合、長丁場を示唆している。

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北岡 兄

 電話をいただき有難うございました。「がんとの闘い」に頑張っておられる貴兄に敬意を表しています。前回、お目にかかった時にお話ししたことをいろいろ考慮していただいて感謝しています。

私は30歳前から、がん専門医として手術を中心に25年間活動してきましたが、当時は「がん」と告知することも許されない時代で後悔することばかりでした。とくに抗がん剤を使用する治療(化学療法といいます)はよい薬がないのと副作用への対応が難しく、中途半端なことをしてしまいました。

 さて貴兄の場合ですが、病名もはっきり認識しておられるし、治療法についてもよく知っておられる。そこですこし厳しいことをお伝えしたいと思い、病期が「ステージ3」(注:茅ヶ崎市の医師は当初「ステージ4」と診断したが、今では「3」で同意)であること、化学療法をかなりの間続ける必要のあることをあえて話しました。

 病気の治療というのは、主治医と患者さんとの間の共同作業と理解し、第3者が口出しをしてはならないと思うのですが、貴兄の精神力、知力は周囲の“雑音”も吸収していける逞しさをもってるからです。

 ふつう、抗がん剤の副作用は大学病院で対応するのはかなり困難で、どうしても近くの信頼できる医師に相談し、きめ細かく対処していただくことが必要だと思っています。今回、かなり細かい対応がなされているようで、うれしく思っていますが、副作用による具体的な症状については、地元の医師に訴える方が、より適切に対応してくれます。地元の主治医にも時々報告し、接触を続けてくれることを祈っています。

 今回の化学療法がいつまで続くか・・・、治療効果と副作用を見比べながらかなりの長期戦になることを覚悟してほしいと思っています。最終的には教授の判断を尊重して下さると、友人としても安心です。

 かって慶応大学の近藤誠医師は「ガンと闘うな!」と申しました。効果のはっきりしない化学療法で、副作用に苦しむ患者さんを見ていると、そうした気持ちになることは自然の成り行きですが、それは医学の否定と同じで、その行く先は明らかです。

 友人として貴兄にお願いしたいことは、地元の医師の助けも借りながら、まず半年頑張ってみることだと思います。

 私の妹は肝癌でなくなりましたが、「兵糧攻め」も4回行いました。私が主治医となった患者さんにも相当な無理をお願いしました。たいへんな忍耐を要したと推測していますが、貴兄の精神力は誰よりも強靭です。 何か不安が生じましたらメールか、わが家に電話して下さい. わたくしの経験が役立つときがあるかもしれません。


1 件のコメント:

  1. おっ、Sくんだ。懐かしい。彼は私の病気(夜間頻尿症)についても親切な、細かい指示をくれた。どこまでも信用できる人間だ。ステージ3だと聞いて、うれしく思う。以前にも書いたけれども、抗癌剤投与は苦しいらしい。生命に対する攻撃を行うのだから当然だ。しかし、これも一つの、しばしば有効であることが判っている治療法だ。ときどき「生活の質」のために骨休めしながら、治療を進めて欲しい。多くの人から声をかけられているようで、よいことだ。力づけになる。こちらはサクラが満開だが、まだ見物はしていない。今年も見送ることになりそうだ。

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